痛みの記憶
痛みは記憶される
なぜ痛み治療が必要なのか?
その答えのひとつは、「痛みを放置すると中枢(脳や脊髄)に痛みが記憶されてしまうから」です。
これは学会や論文レベルでは常識になりつつある事実ですが、まだまだ一般に浸透している知識ではありませんので、ここでは痛みに関する最先端の話題について、できるだけわかりやすく説明したいと思います。
中枢性感作
わかりやすく「痛みの記憶」と表現しましたが、正確には中枢性感作と呼ばれます。
人間の脳は学習機能を持っています。このように書くと当たり前のようですが、もう少し掘り下げていえば、「よく使う機能に特化していく」ことになります。
たとえば、わかりやすい例でいうと、暗記テストの勉強です。
一度見ただけで覚えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合、数日経つと忘れてしまうものです。しかし、二度三度と繰り返し見ることで、記憶が定着し、長期間に渡って記憶を保持できるようになります。
スポーツなどでも同様に、同じ動作を繰り返し練習することで、意識しなくても一連の動作をスムーズに行うことができるようになります。
実は、痛みの領域でもこれらと同じことが起こります。
痛み刺激が長期間続くと、その刺激がより効率的に伝わるようになります。
具体的には、痛みに敏感になったり、もともとの痛み刺激がなくなっているにも関わらず脳が痛みを感じるようになります。
つまり、最初は痛み刺激が脳に伝わって「痛い」と感じていたものが、痛みの原因がなくなった後にも「痛い」と感じるようになるのです。
情動との関連
先ほど、痛み刺激の反復(あるいは長期の痛み刺激)が、「痛みの記憶」に関わると書きましたが、もう一つ「痛みの記憶」に関与する要因があります。
それが、情動です。
情動とは、快感や不快感といった感情です。
一般的な経験論として、楽しかったことや辛かったこと、悲しかったことは、一度の経験にも関わらずよく記憶に焼き付くものです。
これは、脳の情動を司る領域と、学習に関わる領域の間に神経的なつながりがあるためです。
この情動を司る脳領域と、痛みを感じる脳領域もまたつながっています。
痛くて辛い、痛くて悲しい、という情動を伴った痛みは、より記憶されやすい刺激といえます。
強い痛み、長引く痛みは情動を伴いやすく、難治化、慢性化しやすいのです。
早期の痛み治療が大切
最初の論題に戻りますが、難治化、慢性化させないために、痛み治療が重要なのです。
しかし、現状としては痛みをこじらせてからペインクリニックに来院されるという患者さんがほとんどです。
椎間板ヘルニアなどの坐骨神経痛を伴う腰痛や頚椎症、帯状疱疹といった神経障害性疼痛の治療は、特に専門性の高い痛み治療が必要となります。
痛みを我慢することなく、早めに適切な治療を受けるようにしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当院は、大阪市中央区のペインクリニックです。
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-4-5 御堂筋ビル8F
大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)心斎橋駅から徒歩1分